2013-04

11-9.岡山藩士族

備前手blog

 岡山藩士族が入植したところは対面原の西北端で、現在の熱海町安子島、下伊豆島付近である。ここを通る国道49号線沿いに建つ「入植者の碑」には、明治13年12月28日に小松健太郎ら10戸が開墾願を出し允許(許可)されたが、実際には何戸入植したかわからない、と記されている。高橋哲夫氏は著書「安積開拓史」の中で、おそらく4戸から5戸ではなかったか、としている。
 移住の中心となった小松健太郎は、岡山藩家老・池田政昭の二男で、後に叔父である同藩家老・日置忠尚の養子となり、日置健太郎を名乗った。移住にあたっては親戚筋の猛反対にあったが、それを実家筋で絶家となっていた小松家の再興という名目で許され、小松を名乗って入植している。(立岩寧著・大久保利通と安積開拓)
 入植に当たり小松は、県に対して西洋農具(棒立て二輪馬車、馬具、プラオ、三本爪ホークなど)の借用、農具使用のための教師の派遣を申請して認められている。県、政府がこのような大胆とも取れる計画を認めた背景には、政府が安積開拓を始めるにあったって描いた「士族による西洋式大農法」の実践例としての期待があったことがうかがえる。その後小松は、この農法の一環として牧場用地を借り受け酪農経営も試みている。当時の社会背景の中では画期的なことであり、小松の行動力のすごさが現われている。
 しかし、このような大農法は政府の期待とは裏腹に経営的に長くは続かず、小松は明治30年頃にこの地を離れたとされるが、その後「日置男爵」として外交界に名を残している。
 今も、この開拓地のことを地域の古老は「備前開墾」と呼ぶ。写真はその地域の一端である。



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12.安積疏水について

猪苗代湖blogblog

 安積地方は、年間降水量が1200mm以下と少ないため、小河川沿いの既耕地であっても旱魃に苦しむことが多かった。なかでも安積野は、台地という地形の関係でとくに水に乏しく、比較的なだらかなところも原野として放置されていた。
 このため、古くから地元の名主や富商らは猪苗代湖の水を引きたいと考え、自費で調査・測量を行って福島県に建白書などを提出していた。なかでも、とくに熱心だったのが須賀川で回送業を営んでいた小林久敬で、彼は私財すべてをかけるほどの情熱を傾けている。しかし、当時は猪苗代湖が若松県の管轄であることや導水に莫大な費用がかかることなどを理由に取り上げられなかった。
 一方、県の立場でこれらの要望を受けていた中條も、大槻原開拓の成功事例を安積野全体に広めるためには、どうしても大量の灌がい用水の確保が必要と考え、自らも猪苗代湖からの導水ルートの現地調査などを行っていた。
 ちょうどその頃、明治天皇の東北御巡幸が決まり、それに先立ち大久保利通内務卿が下見に来県した。その機会をとらえ、大久保に面会した中條は、若松、磐前(いわさき)、福島各県を合併し、湖水の導水(湖水東注)を図れば、全国から士族を募ることが出来、広大な安積野の開拓も可能となることを力説している。
 明治9年、政府は全国の県などの統廃合にあたり、若松県、磐前県を福島県へ合併する旨を決定し、明治11年には猪苗代湖からの導水のための現地調査を開始している。そして翌年の5月、ついに安積地方の夢、悲願であった湖水東注が正式に決まり着工された。
 この事業は、古くから湖水を利用していた会津地方への影響を無くすための十六橋水門工事と、奥羽山脈にトンネルを掘り、幹線水路と分水路を合わせて130kmに及ぶ疏水路を掘削するという難工事であったが、国の威信をかけた取り組みによって3ヵ年弱で完工している。当時、猪苗代湖疏水とよばれたこの疏水によって猪苗代湖の水が、有史以来初めて安積野3,000町歩を潤し、太平洋へとつながったのである。 疏水はその後、灌がい用水だけでなく発電用水、工業用水、飲料水など多目的に利用され地域の発展に大きく貢献している。安積疏水は国営第一号で琵琶湖疏水、那須疏水とともに日本三大疏水といわれる。
写真は安積疏水の源の猪苗代湖である。猪苗代湖はおおよそ面積103K㎡、周囲50km、最大水深95mで、面積は琵琶湖、霞ヶ浦、サロマ湖に次いで日本4位を誇る大湖であるが、湖水の出口は十六橋水門が造られたところだけであった。(次回は安積疏水の流路について)

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かんの よしただ

Author:かんの よしただ
郡山市に住む。
明治初期、殖産興業と士族授産を旗印に推進された安積(あさか)開拓。この国家プロジェクトに興味を持つ市民。

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